「星の子」(今村夏子)雑感。
今村夏子の「星の子」を読みました。
- 作者: 今村夏子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2017/06/07
- メディア: 単行本
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今村夏子は、好きです。
前に読んだのが「こちらあみ子」だったか。
確かみなもとはなえさんに紹介いただいたのだと思います。
めちゃめちゃ面白くて。
本作は2010年の「太宰治賞」を取りましたが、そのあとしばらく新作がなく、
どうしたのかと思っていたら、昨年「あひる」で芥川賞候補になった。
それに続いて、本作「星の子」も、芥川賞候補。
2017年上半期は、同じく私が心を寄せる柚木麻子も直木賞候補になってたこともあって、
「星の子」を読んでみようと思ったわけです。
ほいで、「星の子」。
……うーん、やっぱり、めちゃめちゃ面白い。
こういう、淡々と美しい文章、大好きなんです。
今村夏子を紹介してくれたみなもとはなえさんの文章もそうなんですが。
丁寧に、丁寧に、この言葉だという言葉を、妥協なく選び抜いて置いていくかんじ。
世界を創る行為だと思うんです。
それを見ていると敬虔な、しずかな気持ちになるというか、満たされる。
やっぱり、好き。大好き。
ちなみにこの回の芥川賞は沼田真佑の「影裏」が受賞しています。
こちらは未読なんですけど、とりあえずここまで没頭すると、こういう気持ちになる。
「なぜ『星の子』が芥川賞を取れなかったのか?」
おもしろすぎるからかなー、と冗談でなくそんなことを考えながら読み進めました。
芥川賞はいい意味で「つまらない」作品を選ぶ傾向があるみたいな気がする。
面白い作品なら、直木賞しかり、エンタメでももっと適切な賞があるからね。
そうじゃない、良質な「つまらない」作品にも価値があって、意味があって、
そういう作品を汲み取ってくれるのが芥川賞だと思っています。
「星の子」、純文学っぽくないなあ、と思って。
でも、最後まで読んで、思った。
「こ れ は 純 文 学 だ わ」
なんなんだこの落とし方……これは……これはありなのか……
あんまりネタバレになるとあれだからこれ以上は触れませんが。
ちょっと、いや、かなり、びっくりしました。
純文学は、常に新しい作品が現れて、読みたび発見があって面白いです。
創作論なんかメじゃない。
「そんなん書いていいのか」みたいな書き方をどんどんしてくる。
そのいっぽうで、抑えるところは抑えてるというか、
「星の子」もしっかり書き切られた作品で(結末だけは評価保留ですが)、
いいなあ、と思いました。
ちなみに芥川賞選考では、小川洋子と川上弘美が強く推していたようです(強いふたりですね)。
「いかに書かないで書くか、という根源的な問いをはらんでいて興味深かった」
「書かれた言葉より、書かれなかった言葉の方が存在感を持っている」
「作者は、誰も教えることのできない、「どう書けばその小説を小説たらしめることができるのか」ということを、すでによく知っている」
とのこと。