今年読んだ文芸系同人誌で打線組んでみた。

いくぜ!

1番遊撃手.俊足巧打のすごいやつ。文芸界のスピードスター

「少女幻想譚」(伊藤なむあひ)

なむあひさんのアバンギャルドな小説スタイルに
勝手ながら近しいものを感じていて、
そのなむあひさんがついに単著を出すということで購入。
キンドルになります。
基本的には文芸誌「絶対移動中」などに寄稿した作品の
再掲載なのですが、どの作品も攻めてましたね!
与えられた全ての選択肢に対して「Go ahead!」を選んだかのような超攻撃的作品集。
つよい。
なむあひさんは心のライバルでもあるので、来年の動向を伺いつつ、
私もいいものを書こうと思います。
2番二塁手.卓越したバットコントロール。変幻自在のアーティスト

「さよなら」(こんにゃく)

私はこんにゃくさんの大ファンであることを公言しています。
最初に読んだときから思ってたのですが、なんせこう、巧いなあ、と。
文章もだけど、心を引き付けるような書き方が巧い。
人間をよく観察されているのだと思います。
作中に出てくるオブジェクトのちょっとした描写なんかが細かく書いてあると
僕はすごく気を惹かれてしまうのですが、その点も推しポイント。
前作の「ビオトープ」より全体的にスケールアップしていて、読んでいて幸せでした。
好きか嫌いかでいえば、今年一番好きな同人誌でしたね。
みなもとはなえさんと改名されて、来年は文学フリマにも新作を出すというふうに聞いていますので、
楽しみです。
3番右翼手.天才。

「ミニチュア・ガーデン・イン・ブルー」(キリチヒロ)

読んですぐくらいは登場人物のことばかりが頭に残っていたのですが、
時間が経つうちに次第に、水が地面に染み渡っていくように
登場人物たちが暮らした”町”の情景が頭に浮かぶようになりました。
スターウォーズ」が「スター魚津」に聞こえるくらいに。笑
そんなに風景描写は細かくなくて、むしろ人物描写が細かく書いてあったと思うんだけど、
その人物の目を通して、町のことが気になり始める。
物語には出てこないものの、中心に関わる早苗という人物の存在。
感性が感性に訴えかける、ずっしりと心に残る作品でした。
3部作となっていて、続編の「夏火」はすでに頒布されているのですが、
来年、ついに完結編が出るという噂です。
とても楽しみ。
4番一塁手.チャンスは絶対に逃さない。脅威の打点を誇るクラッチヒッター。

「METEOR EP」(木野誠太郎)

厳密には今年読んだ本じゃなくて、去年の年末くらいに読んだ本なんだけど。
入れさせて!すごくいい本なので、入れさせて!
「1冊オススメの本を教えて」と言われたら、迷わずこの本を選ぶと思います。
装丁含めて、すごくクオリティ高い。もっと売れたらいい(すでに文フリではかなりの数が出てるみたいだけど、もっと)。
文フリって何故か少女小説が多いんですが、この本に出てくる「青空さんのメテオ」はトップランカーだと思います。
何度でも読みたい。
5番三塁手.塁上の掃除屋。長打を打ちまくるハードヒッター。

「ことわりさん」(壬生キヨム)

短歌集です。
キヨムさんのツイッターとか話し方とか雰囲気とか結構ツボなんですけど
(とてもかわいらしい!)
そんな素敵なところがストレートに現れた短歌!
カタルシスというか、虚脱感というか、なんか言葉で言いにくい感情で
つまり幸せになってしまう。
好きなひとにプレゼントしたい本です。
キヨムさんにはたくさん短歌書いてほしい。大好き。
6番中堅手.野球の教科書。チームを支えるユーティリティープレイヤー。

ジェミニとほうき星」(高梨來)

野球の教科書というか、萌えの教科書だと思いますね。
すごく萌えを分かってるな、という本で、だからBLがしっくりくる。
(単純に趣味が似ているという説もある……某ビンゴも4列ヒットしたし)
登場人物が魅力的に書いてあって、それはその人々が本当にいるのではないかというように
思い入れてしまう。
祈吏という双子のお姉ちゃんが好きで、まあBLなので本筋から関係ないんだけど、
すごく熱く語ってしまいました。二次創作も書けるぞ!
(熱すぎて來さんすみません。。)
続編も買ったので、読むの楽しみにしてます。
7番左翼手.一発だけを狙い試合を決めるフィニッシャー。

「エレウシスの出血(上)」(黒井メラ)

すっごい怖い話だった記憶が……
怖い話好きなので、読んで満足です。
本って一回読めば終わりの本と、何回も読みたくなる本があるんですが、
まあどちらがいいというわけでもないんですけど
この本は後者ですね、また読みたい。えぐられたい。
また、勝手ながら感覚に近いものを感じた本でした。
僕も怖い話書きたいから。
8番捕手.試合を支配する、球界の頭脳。

「文藝誌オートカクテル・耽美特集」(アンソロジー

白昼社から出版されているアンソロジーです。
耽美特集、ということで。
いい企画でしたね。
文フリで活動している作家で、純文学に属する人が寄稿している本です。
「美しいとは?」に対するそれぞれの答えが書かれており
中には合わない作品も絶対あると思うんだけど、すごく合う作品もきっとある。
そして「美しいとは?」という問いを突き付けられてしまう。
僕も「コトリ」という作品を寄稿させてもらってます。
9番投手.打線に助けてもらってます!

「ともだちの国」(にゃんしー)

最後に僭越ながら、自分の本を。
今年新刊として頒布した本は、思えばこれきりでしたね。。ペース遅いな。。
でもこの「ともだちの国」は、すごいですよ!
結婚前は異性間の恋愛が認められず、同性同士で愛することを覚えていく国の話です。
その同性同士の恋人関係を、国では「ともだち」と呼んでいます。
結構性描写も激しくて、受け入れられるかどうか、勇気のいる作品だったのですが、
たくさんの人に読んでいただけて、感想もらえて、嬉しかったです。
つたゐさんに「ギア比すげー本だぞ!」と言ってもらえたのがうれしかった。
(ポイントがちょっとおかしい。笑)
とてもパワーのある作品。来年も色褪せず、たくさんの人に読んでもられると嬉しいです。
以上となります。
打線というものは、往年の巨人のように4番打者ばかりを集めても機能しないので、
バランスを考えて選びました。
なので面白かった本ランキングではないです。念のため。
あと、買った本でも読んでない本がたくさんあるので……
またそちらも、感想をアップしていけたらと思っています。

感想は、面白かった本だけ書いてます(みんなそうだと思うけど)。
今年はたくさん感想書けたということは、それだけ面白い本に出会えたということで、
幸せでした。作家のみなさん、ありがとうございました。