「キスとレモネード」(彩村菊乃)雑感。
この作品には、他のどの季節よりも「夏」が似合う。海の見える喫茶店まで、ソーダ水を求めて旅に出ようか。ポケットにこの一冊を携えて。
— にゃんしー@かまぶんあまぶん (@slymelogue) 2017年6月2日
カマタまで文学だらけ作品「キスとレモネード」(彩村菊乃) https://t.co/AZNbiq4DjQ #かまぶん
「キスとレモネード」というタイトルも、表紙も、
かわいらしいので、正直最初、
「何が純文学だコノヤロー!」と思ってた……すまん。
しかし開いて読んでみると、
たいへん美しい純文学だったので恐れ入る。
「純文学」というよりは、「純度の高い文学」というべきかもしれない。
お酒でいえばウォッカとかジンとか、そのへんだ。
読んでスカッとしちゃえ。
「キスとレモネード」は、
「緑のまにまに」の四篇からなる短編集。
「メルトダウン」
「夜に溺死」
「ソーダ水の午後」
なんというか、書き込みが丁寧なのだ。
描かれているものへの愛着を感じる。
僕の好きな都都逸に
恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がすというのがあるんだけど、
彩村さんはその蛍のように、彼女がきっと愛している対象のことを
声に出さずただひかるように、丹念に描いている、気がする。
それを読んでいて、美しい、と感じるのだと思う。
「緑のまにまに」「ソーダ水の午後」の二篇が特に好き。
緑のまにまに、は、
主人公とその彼氏とが植物園で過ごす何気ない日々が
淡々と描かれている。
エッセイに近いかもしれない。
萌緑色の夏くさい「あたりまえのこと」がゆっくりと心に染み渡ってきて、
とても豊かな気持ちになる。
「ソーダ水の午後」は、
幻想風のお話。主人公が、ふしぎな女の子と海に行く話。
夏ってね、そうなんだ。すこしおかしくて、生と死の境があいまいになって、
何処かに行ってしまいそうになる。
何処か、というか、行き先は海しかないんだけど。
主人公と女の子が海を見つけたときの描写がとても淡くて、やさしくて、
ああこういうふうに海を見つけたいな、と思ってしまった。
言うてる間にもうすぐ夏が訪れるので、今年はこんな海に出会えるだろうか。
夏が楽しみになる一冊だ。
「キスとレモネード」は、6/18まで大阪の西淀川で開催している
「カマタまで文学だらけ」でも取り扱っています。
よかったらぜひ、見ていってくださいね。
「カマタまで文学だらけ」のサイトをオープンしました。出店者情報・書籍や雑貨情報などなど、これから更新していきますので、よろしくお願いいたします。#かまぶんhttps://t.co/8N4JQHZudz
— 尼崎文学だらけ (@amabun) 2017年3月19日