「ジェミニとほうき星」(高梨來さん)読了
10月末の群像新人賞投稿作が書き上がるまで
読書は封印しておこうかと思っていたんですが(すぐ影響受けるし)、
投稿作はほぼ完成したし、さすがに本も読みたくなってきたしで
読みましたよ。
高梨來さんの「ジェミニとほうき星」。
文芸系同人誌即売会「文学フリマ大阪」で買った本なので、同人誌ですね。
このような本でございます。どどん!
装丁がめっちゃいい。
通りがかりのツッマが「角川文庫か何か読んでるのかと思った」と云うほど。
文学フリマ大阪のときのブースも、めっちゃお洒落でした。
ジャンルで云えばBLということになるんですが、
ボーイズラブ的な表現はごく控えめ。
直接的な絡みもほとんどないし。
文章も読みやすくて、すいすいと話に入っていけます。
人物の感情描写が細やかで、読み応えがある。
物語には必ずターニングポイントがあると思うのですが、
「ジェミニとほうき星」では、主人公の海吏と、その双子の姉・祈吏が
両親が不在の日に、ふたりで夜を過ごすことになるシーン。
もうその設定だけでわくわくですよね。
その夜に何が起こったかは……実際の本でお確かめください。
しかし海吏くん、その夜のあとに「からかったりしてごめん、どうかしてた」はナイわ。
二時間飲み放題お説教コースやわ。
というのは、作中は海吏の視点で固定されているので、祈吏の感情は海吏視点からしか見られないんですが、
祈吏はもしかしたら、双子のきょうだいとしてではなく、海吏のことを好きだった可能性があるんですね。
祈吏はいい子なのでそんなこと絶対に言わないと思うのだけど、一見大団円のように見える物語の最後、
寂しそうな祈吏の背中が見えなくもないのである。
海吏は若干天然ではあるけど、物語に出てくる子たち、相手のことを真っ先に考えるいい子ばかりです。
高校生だった頃、ぼくらはそういうふうに人を好きになっていたかもしれない。
「ずっとそのままでいて」という気持ちと、大人になった彼らの恋愛を見てみたいという気持ちと、半々あって、
書かれていない物語にも想像を膨らませたくなる豊かな作品でした。
p.s.「満足できない人のためにエロ重視のスピンアウトを用意した」とか高梨來さんがおっしゃってた気がするんですが、
どんだけ手が行き届いてんねん。笑
それとは別に続編もあるようなので、こちらも気になります。