「はばたく魚と海の果て」(キリチヒロさん)読了


ブルー三部作完結編「はばたく魚と海の果て」を
読み終わりました。

今回の文学フリマ東京で一番楽しみにしていた本で、
イベント開始早々ブースに走って一番にゲットしました。

読み始めると、ブルー三部作がもう終わるんだなということが
ただ寂しくて、でもどんどん読み進めてしまって、
海に吸い込まれる太陽のように、あっという間に読み終わってしまっていました。

全ての感情に意味があるとすれば、寂しいという感情は何のためにあるんだろう。

おなじみの男子高校生3人(智尋・陸・椎名)と、2巻で登場した昴が、
高校三年生を過ごす話です。
高校三年生、すなわち、未来を迷い、選び、掴み取ろうとする時間。
4人それぞれの悩みがあって、それは全体から見ればごくちっぽけで、
でも彼らから見ればそれが全てで、必死で、息苦しくもがく。
彼ら、という三人称ではなく、一人称にして見てもいい。
高校三年生だった。

3人の中では、一番陸に感応してしまった(これは前作でも前々作でも同じ)。
少年離れした彼の、少年的な弱さや悩みが堪らなく愛おしい。
「生きてよ」
この言葉に至るまでの3部作の陸を振り返るとき、
祈りのように美しい、陸の生と明貴さんの死が浮かび上がる。

ラストシーン、金色の光の中に包まれる陸はただ美しかった。
それを見つめる智尋の視点と符合した。
この物語を僕は、ずっと智尋として追いかけていたのかもしれない。
だとしたらこの物語はきっと終わらない。
陸の姿を追いかけ続けた僕は間違いなくここにいる。