海がないのに青い町

実を言うと、台湾があんまり好きではない。
理由は簡単かつたったひとつで、「海がないから」。

海のある町に育って、海の匂いがする人が好きで、
景色の中にいつも海を探してしまう。

就職する会社を決めたときも、周りに海があるかどうかとか
すごく仕方のないことを気にしてしまっていた。

京都にも馴染めなかった。
北京は好きだった。なぜだろう?

今日は、いつもと同じ帰り道だったのに、
周りが何故か、すごく青く見えた。
ビルとビルの隙間におだやかな光が落ちて、
白いスリット光が日暮れのアスファルトを冷やした。

いい匂いがした。
風が心地よかった。
静かだった。
分からないけど、すごくいいことがある予感がした。

今日だけ、たぶん今日だけだけど、
台湾を好きになれた一日。
明日になって見返せば、特に美しくもなんでもない写真を
残しておく。













この気持ちが、いつまでも消えなければいいのに、と思う。
道をどこまでもまっすぐに歩きたかった、できることなら。