「透明物語」by 小柳日向、読みました

というわけで、第二十回文学フリマ東京で手に入れた
小柳日向さんの「透明物語」を読みました。


装丁がとても美しい。
著者本人で装丁もされているそうです。

本を開いて第一声。「あ、読みにくい」。

読みにくい、には少なくとも2つあると思っています。

1.文章に構造的欠陥がある
2.文学的要素の密度が濃い

この作品の場合は、後者。
とても読み応えがあって、しっかりと味わいながら読んでいきます。

特に読みにくかったのは、1作品目の「透漏」かな。
これは詩の領域に片足突っ込んでいると思う。
夜に強めのお酒をショットで嗜みながら、じっくり読みたい感じ。
ちなみに私はお酒は野球観戦とか、本当に心を許している時でないと飲みません。
同系統でぱっと思いつくのは、泉由良。
山本清風さんも近いと聞いたことがありますが、私は彼の作品は
イカサレ」「青なら」など、ライト側の作品しか読んだことがないので、ノーコメント。

「透明物語」というタイトルですが、文体は透明感のある感じではない。
わりと意味を濃厚に含んだ、ブラックコーヒーのようなストロングの味わい。
しかし間違いなく、美しい。

最後から2番目の「透明物語」が一番好き。
夕子が、少女が消える童話の話をしたとき、情景が明晰に浮かんで眩暈を起こしそうになった。

文学フリマで幸運に出会えた名作のうちの1つです。