前略

こんにちは。初めまして。
お手紙、ありがとうございます。
頂けるとは思っていなかったものですから、
嬉しいと同時に、少し、戸惑っています。

お手紙、何度か読み返しています。
あなたのことが分かっていくようで、
それはまた離れていくことでもあるのでしょうね。
しかし寂しくはありませんから、不思議です。
だって冬の早朝、刺すように透き通った空気を飲み込むことを
寂しいとは形容しないでしょう?
この手紙が届く頃には、春が来ていますか?

普段は、私も仕事をしています。
休日は、家にいます。
何もせず、ぼんやりとしている時間が好きです。
ですから、私も温泉は好きですよ。
その土地の雰囲気のようなものが身体の中に浸透してきて、好きです。

好きと思うもの。
時間、でしょうか。
みなに等しく与えられた絶対的なもの。
美しくて、残酷なもの。
手には触れられませんね。
もし触れられるなら、どんな形、温度をしているのでしょうか。

嫌いなもの。
これは、自分、ですね。
そう云ってしまう不誠実で不真面目な自分も含めて、嫌いです。
どうか嫌いになってくださいね。

あなたは変わってしまったのですか。
もう悲しくはないのですか。
歩くことをやめてしまったのですか。

私はそれに対して、伝える言葉を持ちません。
ただ、私は笑っているだけです。
あなたの書いてくれた文字の、凛とした稜線や、想像していたよりも強い筆圧に、
あなたがいるような気がして、嬉しいだけです。

寒い日が続いています。
そちらはどうですか?
風邪をひかないでくださいね。
林檎ジュースを温めると、身体がぽかぽかしてお薦めです。

この手紙をどういう形で終えればよいか迷っていますが、
バイバイ、ありがとう。