スタンドバイミー

「他のひとの立場に立って行動しなさい」
よく言われる言葉です。
大事な言葉として、心に刻んでいる人も多いでしょう。

これが実は、すごく難しいことだという話をします。

大学のときの友人で、N君という人がいました。
N君とは別の大学だったんですが、
某インカレイベントサークルで一緒にイベントを打ってた経緯もあって
しばしば遊びに行ったりしていました。

大学4回生のときだったと思います。
N君から、卒論を書くので協力してほしいという依頼がありました。
N君は、文学部心理学科でした。
当然、卒論の内容も心理に関連するものになります。
具体的には、心理テストをベースとしたものでした。

被験者として集められたのは、
同じインカレイベントサークルの、
仲良し組5人(N君含む)でした。
やたらウマがあって、
サークル以外でもよく遊びに行ったりしてましたねー。
本題とは関係ないですが。
男子3人、女子2人で、恋愛関係の揉め事はありませんでしたが
これも本題とは関係ありません。

ほいで、まず5人ともある心理テストをやりました。
コンシューマのフランクな心理テストじゃなくて、
心理学の分野で使われている厳密な奴やったみたいです。
といっても内容は普通で、100個くらいの設問に答えて
それの答え方で、どんな人間かをカテゴライズするというものでした。

結果はこうでした。

サークルのバランサーK君……タイプA(Average)
サークルのムードメイカーN君……タイプB(Blast)
サークルの関係のつなぎ役Fさん……タイプC(Calm
サークルのまとめ役Tさん……タイプD(Director)
わたしです……タイプE(Eccentric)

全部で5タイプしかないのに
見事にタイプが別れたわけです。
だから仲がよかったのかもしれませんねー。

けど、心理テストはここからが本番。

「他のメンバーならどう答えるか、という視点で
再度、同じ心理テストをやること」
というお題を課されたわけです。

つまり僕の場合やったら、
K君ならどう答えるか、N君ならどう答えるか、Fさんならどう答えるか、Tさんならどう答えるか、
それぞれの視点で、4回心理テストをやるわけです。

大変でしたねー……設問多かったですからね。

まあそれはそれとして。

結果はどうなったと思います?

「他のひとならどう答えるか」
そういう視点で回答したはずなのに
僕がやったテストの結果は4個とも、タイプEになってしまったんです。

もっというと

K君の結果は全部タイプA
N君の結果は全部タイプB
Fさんの結果は全部タイプC
Tさんの結果は全部タイプD

になりました。

「他のひとならどう考えるか」
そういうふうな視点に立ったとしても、
結局のところ「自分」というバイアスがかかってしまって
正しく相手の立場に立つことができないんですよ。

これは本質的な問題だと思います。
すなわち、変えることができないという意味です。

「他のひとの立場に立って行動しなさい」
これがいかに難しいか、という話です。
どこまでいっても、
表面だけ合わせて、立場に立っている振りができるのが限界でしょう。
あるいは仮に誰かの立場に立てるとしたら、
あなたとその人の考え方が元々似通っているだけの話です。

であれば、どうすればよいか。

そのひとつの回答が
「あなたとわたしは違うけど、繋がっている」
だと思います。
違いを認めた上で、手を繋ごうと。

それはひとつの意味では、平和に向けての道しるべじゃないでしょうか。