絶対移動(中)大賞レビュー

「廃墟って別に萌えないよね」
ていう話を湯さんとしてまして、
結論が
「うちが廃墟だから」
でした!どかーん。

というわけでその遺跡の中から
「絶対移動(中)大賞」の本が発掘されましたので
レビューいたします。

これは「絶対移動中」という小説サークルで
公募された賞です。

受賞発表の本に
「開拓せよ!最前線」と銘打たれたとおり
前衛的な小説が大勢を占めたもよう。
意図せずか、狙い通りか分かりませんが。

で、レビューですが……

大賞を取った「白雪姫前夜」についてのみ書きます。
この大賞を語る上でこの作品が一番象徴的だと思ったし、
僕自身、一番楽しめて読めたので。

物を書く上で、大切な3段階があると考えています。

1個目は、読者を読む気にさせること
2個目は、最後まで読ませること
3個目は、好きになってもらえること

「白雪姫前夜」についていえば

1個目は、
「小柄な小学生なら一人くらいは入りそうな大きさのトランク」
というキラーフレーズがいい役割を果たしてる。

2個目は、
読みやすく軽快な文体に乗って、
難解とも思えるストーリーでも難なく読み進めることができる。

3個目は、
発表後にTwitterや音源などで二次作品が多発したことを考えれば
いうまでもないでしょう。

何よりもこの作品のキモは
「転換」のうまさにあると思います。

前衛的な作品のポイントは、往々にして「転換」にあると考えています。
一般的な小説が「起・承・転・結」とすれば、
前衛小説は「転・転・転・転」。

結果として、前衛小説は読みにくくなることが多い。
コンテキストから置き去りにされてしまうんですね。

でも、この「白雪姫前夜」は、
スマートな描写に合わせて
絶妙のタイミングで「転換」を入れることにより
前衛ながら、抜群の読みやすさを図っている。

面白いと思いました。

誉めっぱなしだとその筋の者かと思われるので
批評もいくつか。

まず、最後は無理に締めにいった感がありました。
例えば「〜あくまでトランクだからだ」の締めはいらなかったんじゃないかと。
これらによって文章全体になくてもいい筋が通ってしまい、
「白雪姫」と「トランク」と「それ以外」と
お話が3つあるかのような印象を受けてしまいました。

もうひとつは、「賞向け」であるということ。
この作品に限らず、実験的な作品というのは、
賞では受けてもそれ以外の場所に出すとそれほどの評価を受けられないことが多い。
例えば、車のモーターショーでも
見栄えのいいコンセプトモデルをそのまま販売することがないように。
賞以外の場所に出す際には、今あるコンセプトをベースに
サービス精神のようなものが必要であるように感じました。

なんにせよ、おもしろかったー。
僕も今書いてる小説、がんばろー。

あと、2011年に書いた小説をあとでアップします。
今からホームページつくる!