桜と猫
会社が終わって、家に帰る前に、
必ず湯さんにメールを入れるんですよ。
今から帰るよよーって。
で、チャリキでびばびば帰るんだけど、
メールした後なかなか家に着かないことがある。
そういうときは、
だいたいコンビニでマガジンを読んでるか、
公園でダンスを踊ってます。
一応、パフォーマンスの練習なんだけど、
これも路上ライブだと思うんです。
見てるひとなんか、もちろん誰もいないよ。
けど、自然のなかで一体になってる。
元々歌や踊りって
そういうものなんじゃないかな。
で、今日の帰りにも公園に寄ると
桜の花が咲いてた。
暗やみの中に、宇宙のように光る。
そこで歌って踊ってたら、向こうから白い猫が
歩いてくるのに気づいた。
白い猫は、ちょっと離れたところに止まると
金網の向こうから、木陰からじーっとこっちを見てた。
僕は構わずに踊る。
猫に気づいてないかのように。
猫は、そのまま動かない。
じーっとこちらを見てる。
桜の木の下で、猫の前で。
こういうのも、幸せなライブのうちの1つです。
ひとしきり踊ると、誰にともなく
「ありがとう」てつぶやいて帰った。