Isaac Asimov

ノンフィクションが好きだ。

例えばWBC2009決勝戦10回のイチローのセンター前ヒット。
イチローの集中しきった顔とその頭んなかにあるイメージ。
韓国イムチャンヨンのボールをまさぐる仕草。
固唾を呑んで見守ったみんなの瞳。
3秒後に現れた歓喜、涙、声。
二塁ベース上の冷静な表情。

そういった類のものが
本当にいい作家によって描かれたとき、
生まれるえもしれぬような感動が好きだ。


作家でいえば山際淳司
野球ノンフィクションの走りやね。
出世作となった「江夏の21球」によって
江夏豊という時代を代表したピッチャーは
輝きを増した。
同じ本に入っている代表作
スローカーブを、もう一球」もいい。

あとよかったのは、あまり知られていないけれど「後藤正治」。
「人買い」とも言われた野球界の裏稼業にスポットを当てた「スカウト」は
高校生のとき初めて読んで、その世界観に圧倒された。
このひとも野球を書かせたらうまくて、「牙」という本もよかった。
あ、これも江夏豊やね。

野球じゃない本もよくて、「ベラ・チャラフスカ」という
チェコの女性体操選手について書いた本。
女性らしい体操から、
「コマネチ」に代表されるような速度と精度の体操への変革期。
その前の時代の体操を代表した選手。
この頃の体操はなぜ、東欧がリードしていたのか。
世界大戦後の東欧の騒動・革命を背景に描かれていく。
体操が生きることに包含されるのか、生きることが体操に包含されるのか。
円の重なり方の違いが、それぞれの生き方へ影響していく。



すごい話が逸れたんだけど、
「Marion Tinsley」はチェッカーの伝説的なチャンピオンです。
チェッカーというのはまあ言ったら、チェスをすごく簡単にしたようなゲーム。
Tisnleyの凄いのは、45年間の数千回のゲームを通して、7回しか負けてないところ!
完璧に限りなく近いチャンピオンだったらしい。
晩年の頃は、敵は引き分けに持ち込むのが精一杯で、「勝つ」なんて到底考えられない状況だったらしい。
で、敵がいなくて12年間試合をしてない(できない)有様だったそうな。

あるとき、Tinsleyに久々にライバルが登場する。
その名はChinook。
無敵に近かった頃のTinsleyを相手に、6敗目と7敗目の土を付けた相手。
ただ、Chinookは人間じゃなかった。
コンピュータプログラムだった。

最初協会は、2人の戦いを認めなかったらしい。
それに対してTinsleyは、王座を捨ててしまった。
どうしても戦いたいからって。
それで協会もついに、2人の戦いを認める。

結果は、Tinsleyの4勝、Chinookの2勝、33引き分け。
Tinsleyを相手に2勝したChinookが凄いのか?
けれど、コンピュータが圧倒的に有利であるはずのチェッカーというゲームで
Chinookに4勝もしたTinsleyはやばい!

(チェスを単純にしたゲームなんで、手の全探索の効くコンピュータはチェスよりずっと有利になる。
同時期にチェスではコンピュータプログラムDeep Blueが
人間のチャンピオンKasparovを敗ったことを考えると、
Tinsleyの成績のありえなさがわかる)

2年後。
TinsleyとChinookは再戦する。
6試合して、全て引き分け。
記録はここで終わっている。
Tinsleyがその後、癌で亡くなったからだ。

Tinsleyにとって、Chinookはなんだったんだろう?
ただの対戦相手?ライバル?友達?
どういう感情を持って、盤を対していたんだろう。

人間とコンピュータの関係を思うとき、
いつでも僕は、TinsleyとChinookのことを思い出します。


なかなかちょっと書いただけでは
感動のイメージを伝えることができないんだけれど、
ちゃんと伝えることができるようなノンフィクションを書けたらなあと。
文章力、表現力は課題やねえ。



しかし今週は仕事の配置転換もあって、
目のまわるような忙しさ、
ハードボイルドな日々であった!

英気回復ということで、
明日ETCを設置してもらうんで、
湯さんとデート行ってこようと思います。
湯さん、よろしくね!


CDの録音もあります。
週末は表現活動がONの日!