【レビュー】すな子へ-泉由良

白昼社文庫から発売された「すな子へ」、買って読みました。
著者はこの文庫の代表でもある泉由良です。

白昼社文庫から発売された本はいくつか読んだことがあるんですが、
今回まずびっくりしたのはその製本の品質の高さ!
自主制作なんですが、一般流通の本に近いレベルに仕上がってます。
これで500円はすげーなー。

白昼社文庫は一般からの出版も請け負っているので、
そこでこのブログを読んでるあなた、出版してみてはいかが?
(著者負担はないはずです。売上のうち何割か貰えます)


話が飛びました。
中身ですが、「すな子」という女性を軸に
「無題」「音夢」(ネム)の2編からなっています。
それぞれスタイルが全然違うのが面白い。

「無題」(タイトルがついてないのであえてこう書きます)は
飛躍感にあふれる、ちょっと詩に近い体をもった作品です。
「珈琲人形」という不思議な存在と「命」を軸に
奇妙で混線した世界が展開されていきます。
一度に全部を味わいきることはできず、
何度か読んでいるうちに徐々に良さが染み渡っていく。
それができるのも、最後の締め方が秀逸だからではないでしょうか。
かっこよくてぶっとんだ文章が好きなひとにオススメ。

「音無」(ネム)はそれに比べると読みやすい。
文章がきれいで、すいすい読み進めることができます。
近代初期に近い、けれど空想上の日本が舞台。
ありもしない昔が思い出されるように、ぐいぐい物語に引き込まれていきます。
気がついたら主人公とか、その相方に自分を重ねてみたりして。
こっちはふつうに面白い作品を読みたいひとにオススメかなあ。
泉由良には珍しい、普通に物語調の小説です。


小説は近いうちにこちらから購入できるはず。
http://cgi.geocities.jp/songbird_ffffff/hakuchusha/hakuchu.html

いま、自主制作が面白い。

白昼社文庫は1冊目から手づくりという、
自主制作の面白さを最も根源から、
体現している出版社といっていいと思います。
ものを作ることの面白さ、
白昼社文庫と一緒に考えてみてはどうでしょう。