千船という町。

女の子の草野球小説「キャンディと王様」の舞台は
「千船」という場所です。
大阪市西淀川区尼崎市の南東部と隣接するあたり。

「ちぶね」と発音しますが、小説のなかでは「ちふね」と呼んでいます。
濁らない発音。
ここでは、実際には存在しない架空の街、という意味合いを持たせています。

千船は、西を左門殿川、東を神崎川に囲まれた洲(しま)です。
この洲「千船」を臨めるあたりに、千船女子高という架空の高校があります。
この学校の非公式野球部が、物語の主人公たちです。

千船女子高は、まわりを鉄道と川に囲まれたデルタ地帯にあります。
不便な土地なので、高校以外は工場ばかり並んでいます。
工場特有の酸味のつよい匂いを嗅ぎながら、しかしこの学校には
どこか純朴な生徒たちが多い。

鉄道と川に囲まれているからか、この学校の生徒たちは
「護られている」と云われています。
少女たちがそれを越えて、大人にならないように。
そして卒業するころに初めてようやくそれを越え、「千船」に至る――。

少女性は、この物語の大事なテーマのうちのひとつです。


真ん中の洲が「千船」。
川を越えて左上の、鉄道と川に囲まれた場所に千船女子高があります。