スローカーブ。
小説「キャンディと王様」の着想はずっと前からありました。
それはどういうものかというと、
「スローカーブを武器にした投手を描きたい」
という構想でした。
野球を好きになった原点はスローカーブではないか、というくらい
スローカーブという球種がずっと好きでした。
名前の示すとおり、球速が特に遅いカーブです。
今中慎二・星野伸之といった
スローカーブを武器にした投手には当然のように憧れましたし、
山際淳司の「スローカーブを、もう一球」というノンフィクション作品が大好きでした。
「スローカーブを武器にした投手を描きたい」
その構想が生まれたときに
同時に投手・乙彼と、捕手・水樹の姿もありました。
今と同じように乙彼はだらしがない投手で、水樹は気の強い捕手でした。
今と違うのは、乙彼が男子であった点です。
水樹だけが女子で、彼女が男子に交じってこっそり甲子園を目指すという
ありがちな構想でした。
それは小説を描きはじめるには物足りない発想でした。
だからしばらく寝かせていたのですが、
あるとき、会社帰りにふと立ち寄って「女子プロ野球」を観る機会を偶然得ます。
身体能力でいえば男子にはるかに劣るのでしょうが、
男子に負けないくらい真剣で、かっこよく、かわいく、
それから女子ならではの煌めきがありました。
そこで私の頭のなかに、ある発想が過ります。
「野球部員を全員女子にしてみたらどうだろうか?」パズルの最後のピースが埋まったかのように
アイデアがそこからするすると出て来ました。
そして、気が付いたら1000ページに近いような
大長編が出来上がってしまいました。
その長さを読ませるだけの、
面白い読み応えのある小説ができたと思っています。
この小説を書かせてくれたスローカーブと女子プロ野球に、
感謝しています。
主人公&エース・乙彼若菜のスローカーブは60km/hくらい。
イメージとしては、こんなかんじです。